2016年07月10日

心から尊敬

7月3日:

 この日、5月以来ずっと2週間に1度集まって準備や話し合いを重ねてきた、日比NGOネットワーク主催による、フィリピン人ゲストを3人招いてのイベントがJICA地球広場で行われました。
後で数えたところ、当日の来場者は153人と予想を上回る規模で、私たちの団体であるFTCJが販売していたフェアトレード商品のドライマンゴー25こは全て完売するなど、とにかく想像してた以上の大盛況だったんです。

 さて、当日私の仕事は大きく三つでした。その内の一つが、ゲストの送り迎えです。
 朝8時半、中央線の中野駅で、本日同時通訳を担当してくださる方と待ち合わせます。私の知り合いである弱視の方で、通訳のブースに入った経験も5回以上おありだということだったので、今回のイベントに協力をお願いしました。
通訳の方と二人、タクシーでゲストの宿泊先へ行き、3人のゲストの内の女性二人、マーリーンとハリエットさんをピックアップして、4人で会場へ向かうのが私の最初の仕事です。
ゲストはもう一人、元ストリートチルドレンのジュード君がいるのですが、今回は日比NGOネットワークと言って、フィリピンを支援先としているNGOの集まりで主催しているため、ジュード君は別のNGOのパートナーです。
ハリエットさんとマーリーンは、FTCJのパートナー団体のスタッフであり、暗黙の了解で、ゲストを招いた団体が送り迎えや宿泊先の手配などの責任を持つ感じでした。

 会場に着いてイベントが始まると、私の二つ目の仕事は、ゲストたちの講演内容を文字として記録係、つまりなるべくスピーチを取り逃さないよう必死でパソコンでタイプすることになります。
会場のスピーカーからはゲスト自身による英語の講演が流れ、希望者に配布されている通訳の機械のイヤホンからは、通訳者による講演の日本語訳が同時に流れてきます。ちなみに私、記録は日本語で取るように言われています。
当たり前ですが、同時通訳とは言っても、日本語訳は英語のスピーチよりも数秒遅れてやってくるので、私はまず英語のスピーチから内容を予測して、日本語通訳を参考にほぼ同時にタイプし、書きながら英語を聞いて次を予測する…という、我ながらなかなか器用なことやってました。
また通訳の関係上、全てを訳すには間に合わない場合にそれほど必要ない1センテンスを飛ばしたりするのですが、記録係はゲストが言った内容を記録する必要があるため、飛ばすことができず、英語のスピーチを自分の頭で訳して速攻タイプしてたこともあります。

 こういう役目だったので、たぶん誰よりも、英語と日本語訳の両方を必死に聞いてたのは私だと思うんです。通訳していらした方が知り合いというのもありますし。そしてこの通訳の方を、本当に本当に心から尊敬しすごいって思ったんです。
自分の頭の中でも私なりに訳しながら英語を聞いてるわけですが、そんな役よりも、それを言葉にまで変換してマイクに届ける彼女の訳のほうがクオリティが高い…、それらを瞬時にできるところが彼女のすごさを実感するんです。
 たとえば、先住民族の状況について話したハリエットさんが、経済発展のために土地開発を行って、政府たちが先住民の土地を荒らしているという話しの中で、
「But indigenous people are not lazy」って言ったんです。え?先住民族は怠け者じゃない?うん?何て訳そう?この後ろ何の話しが来るんだ?っと、言葉を書き逃しちゃいけないので瞬時に文字にするよう言われてる私はあせります。
するとその後ろをまだ聞いてないのにイヤホンからの通訳が「でも先住民族だって黙ってはいません」って訳してて。なるほど。この人天才だって思いました。

 同様に、8000万くらいのすごい大きな数字をハリエットさんが言った時。英語って3ケタずつで区切りますが日本語は4ケタずつで区切りなので、数字を瞬時に訳すの私すごく苦手なのですが、彼女は瞬時に訳してて。
 2回目、またハリエットさんが、7 hundred 何とかthousandみたいな、大きな数字が来て、記録担当の私は焦ります。今度は通訳者のほうも7 hundredの後ろにまだ数値が
あったので訳しそびれたようですが、「沢山の人々が」と、焦った様子なく
何事もなかったかのようにごまかして通った…、その瞬時の判断すごいなと。

 その他にも、関係代名詞のwhoなど、「●●な人々」と後ろまで聞かないと分からない場合あるじゃないですか。そういう時、私のタイピングはwhoより後ろを聞くまで止まってしまいます。英語はそのまま次のセンテンスに行くので、whoより後ろを待っていたら次のセンテンスのタイプが遅れます。
そんな時は彼女の通訳そのまま書き写すんです。なんで分かるのか、彼女はwhoより後ろを聞く前から、前の部分だけで訳し始めてて。whoより後ろを聞いたら、確かに彼女が訳してたのと合ってるんです。なんで分かるんでしょ?

 私は、同時通訳なんて絶対に絶対にできないですけれど、それでもとにかく英語は分かるので、両方聞いてるからこそ、自分の頭でも訳してるからこそ、彼女のすごさを本当に感じました。
時代が許さなかったから、資格障害者が国際協力の仕事になんて就けなかったから、諦めた通訳者、たとえ5か国語話せる能力持っていたとしても。今日のただただ感動するような能力見せられると…、その「時代」という壁が本当に悔しく感じます。
 午後からは各トピックごとに部屋を分かれて、さらに各部屋で幾つかグループを作って、本日の講演内容をディスカッションで深めたり、ゲストに直接質問したりする時間があり、私はマーリーンの通訳として彼女の横に付いてました。
もちろん逐次通訳ですよ、私に同時通訳は無理です。でも何かもう、午前中の彼女のあのテクニック見せられた後だと、ほんと私でごめんなさいって思います。
先住民族の話しは法律や歴史もからむので、議論が難しくなりそうなハリエットさんのほうを彼女が引き受けてくれ、性的虐待や児童買春についてのマーリーンなら、彼女が働いてるプレだ基金で2カ月ボランティアしてたので、私でも何とか通訳できます。

 一通りイベントが終わった後、本日ずっと通訳を担当してくださっていた彼女と会うことができました。同時通訳の時はブースに入ってるので、イヤホンからの声は聞きますが会えないんです。
もう本当にすごいと思ったこと、本当に尊敬したことをとにかく伝えようとする私なのですが、こうして書いててもただただ「本当に」を連発することしかできない残念な語彙力なので、直接話してる時に適切な言葉が見つかるわけも無く…。
「私、惚れ込んだので今度近い内にデートしてください!!」って言ったら、「大丈夫?酔っぱらってる?」って言われました。
 ところで?最後に蛇足!今日これだけ尊敬の対象になったスーパーウーマンですが、人間らしいエピソードも!
朝、駅で待ち合わせしてる時、途中で電車の中から来たラインに「何かカバン軽いと思ったら、財布忘れてきた!定期区間内だから行きかえりには困らないからいいんだけど」って書いてありました!この日彼女は1円も持って無かったですからね(笑)
posted by Yukari at 22:41| Comment(0) | 日記