2015年12月09日

音声の出る聖書のその後(後半)

12月9日
☆ 前の記事の続きです。

 とにかく、聖書を1番ほしがっていたCさんにその場で電話をかけます。英語はほぼ通じないので、私が必至のタガログ語で、「今私はRBIマニラにいます。ここに音声の出る聖書があります。でもタガログ語のがないんです、英語とセブワノだけだそうです。それでもいいですか?」と、ここまでは何とかタガログ語で伝えます。
その後、「英語かセブワノだったら、どちらがいいですか?」と聞こうと思ったのですが、私としては知ってるタガログ語を並べて、「どっちがいいですか?」と言ってるつもりなんですけれど、相手に通じません(笑)
これは私じゃだめだと思ったので、RBIの受付担当である友達に携帯電話を渡します。さすが、いつもフィリピン全国の問い合わせの電話に対応してるだけあって、優しく丁寧に相手のニーズを聞き、生活状況を確かめ、じゃあセブワノの聖書のほうをお送りしますねと確認をとってくれました。
この時、彼女がタガログ語で話すのを聞いて、「英語とセブワノの聖書だったらどちらがいいですか?」という言い方を暗記しました、次からは言えるぞ!

 けっきょく、セブワノのデジタルバイブルを5人分、そしてタガログ語のカセットテープのバイブルを5人分持って帰ってきました、超重かった。だいたい聖書をカセット録音にしたらテープ12本ですからね、こんなの5人分送ったら幾らお金があっても足りないです。
もう、よほどのリクエストがない限り、レイテ島の皆さんにお渡しするのはセブワノ語のデジタルバイブルのほうでほぼ決定ですよ。こっちは片手に乗るサイズですし、200グラムもなさそうな重さですし、太陽電池なので電気が来ていない家でも使えます。

 さて、音声の出る聖書がほしいというリクエストはCさんから出たものですが、無料でもらえるんだったらほしい人は他にもいるんじゃないかなと思って、5人分もらってきました!
私のほうも、どうせマニラからタクロバンに送るんだったら、この携帯電話くらいのサイズの物なら、一つだけ送っても、五つまとめて送っても、送料なんてたいして変わらないですしね。
フィリピンの配達サービスはあんまり信用できないので、しかも彼らが住んでる場所がそれぞれ田舎の、外部の人なんてまあめったに来ないような村なので、各自の家に送ったらたぶん途中でなくなって届かないだろうと思ってるんです。
だから、五つまとめてうちの団体のタクロバンオフィスに送って(そこなら一応街中)、同僚が各自の家に届けてくれることになっています。いずれにせよ、先月のインタビューを基に作成した提言書を印刷して、協力してくれた彼らに見せるために持って行くことになってるんです。

 というわけで、Cさん以外の他の人にも、無料でデジタルバイブルが手に入りますけどいりますか?セブワノでもいいですか?というのを聞こうと思って、夕方帰宅してから電話します。
まずは、レイテ滞在後半に訪問した家の全盲の奥さん。「来てくれてありがとう。2年間誰もこなかった、障害者は社会から忘れられたのかと思った、訪ねてきてくれてありがとう」とインタビューの最後に泣かれてしまった、その女性です。

 余談ですが私、最近週に2.3人ずつ、地方の視覚障害者たちに電話することにしました。レイテでのインタビューを通して、彼らがいかに社会から孤立しているかを知ったからです。
学校に行ったことがない、仕事もない、白杖を持っていない、外に連れて出てくれる人がいない、インターネットなど繋がって無い、携帯電話はあってもお金がなくて自分からは発信できない…、もうそうなったら、社会と繋がる手段は訪問者あるいは電話がかかってくるのを待つしかないですよね。
私たちは、むしろ1週間くらいそういう生活したいなぁとか思ってしまいそうですが、これが2年5年10年30年続いたら…、気がくるいそうに寂しいこと、自分たちは社会に存在を認識されてない、自分たちのことなんて誰も気にしてない、そう感じながら生きるのがどれだけつらいかなって。
それにレイテは、とくに1週間を600円で暮らしている視覚障害夫婦の家庭など、本当に生存確認をしてたほうがいい家庭もあります。とにかく、ただ電話するだけ、タガログ語もろくに話せない私なので、「元気ですか?どうしてますか?」って深い話しなんて何もできないですけれど、月に1回くらい電話がかかってくる、それだけでずいぶん違うんじゃないかなと。少なくともみんなのこと、覚えてるから、気にかけてるから。その存在、大事だから。
週に3人は絶対電話するとか、そういう義務的な感じになるとせっかくの大事な物失っていきますし、自己満足の偽善者っぽくなるので…、そこまで完璧に行うつもりはなくて。
レイテ島に10人ほど、そして3年前に折り紙を教えてた人たちの中で繋がってる人が二人…、12人に最低月1回は電話が行くようにと考えると、だいたい週に3人の計算になるんです。私のタガログ語、進歩するんじゃないかと期待しながら。

 そんなこんなで、夕方にその全盲女性に電話して、今度はちゃんとタガログ語で言いましたよ、「音声の出る聖書はいりませんか?無料だそうです。Cさんが、音声の出る聖書がほしいと言ったので、マニラに戻ってから探して、RBIマニラで見つけました。
カセットテープならタガログ語がありますが、ラジカセは持っていますか?」と聞くと、やはり持って無いと言います。
「デジタルバイブルならラジカセなくても大丈夫です。でも選択肢が二つで、英語とセブワノしかありません。タガログ語のデジタルバイブルがないそうです。英語とセブワノだったら、どちらがよろしいですか?」…と、ここまで、もちろん文法やら単語やらめちゃくちゃでしょうけれど、相手に通じる形で私これだけのことはタガログ語で言えるようになりましたからね!
 何より嬉しかったのは、電話をして、「もしもし、由香理です」と言ったら、「あら、由香理じゃない、久しぶり」と、ものすごく嬉しそうにそして懐かしそうに、まるで昔からの知り合いかのように答えてくれたこと。たった1時間ほどしか会ったこと無いのに、外国人の名前なんて覚えにくいはずなのに。
 先方が全編タガログ語で話してくるので半分くらいしか理解できませんが、彼女の話しから分かったのは、あのインタビューの後に写真を撮ったのですが、その写真を現像してタクロバンの同僚が彼女の家に持って行ったようです。
そして彼女たち家族は、私との写真を家の壁(内側か外側かは知りません)に張って、いつでも見えるように、本当に大事にしてくれてるみたいで。外部の人が来ることなどめったにない、ましてや外国人なんて来るわけがないような田舎なので、たちまち近所の人達の興味を集めて。
「この外国人は誰なの?どうやって出会ったの?」と村中から聞かれて、彼女は得意げに、「私には日本人の友だちがいるのよ」と話しているらしく。地方の田舎の山の小さな小さな村で、私が有名らしいですよ(笑)
いつレイテにまた来るの、いつでも訪ねてきてね、クリスマスに来ないの、うちの家はいつでもウェルカムだから…、また電話してね、ときどき電話をくれる友達がいるなんて幸せだわと…、本当に楽しそうに、会話もろくに通じない私なんかを相手に、奥さん20分しゃべりました!
 何課、温かい幸せな力もらいました。
posted by Yukari at 22:38| Comment(0) | 日記

音声の出る聖書のその後(前半)

12月9日:
 週4日勤務の私は、たいてい水曜日がお休みです。平日に休みになるこの日に、やりたいことがあったんです。
以前、タクロバンの台風被災地に住む全盲女性が、音声の出る聖書を探していましたよね。彼女は学校に行ったことがないので、点字を習っていなくて、だから点字の聖書は読めないのです。
音声の出るタガログ語の聖書がフィリピンにあるのか、ない場合はどうやって作ろうと、このブログにも書きましたし、私のフェイスブックにも英語でアップしてフィリピン人からの情報を待っていました。ブログをご覧になった日本の教会の牧師さんから連絡をいただいたりもしました。
さらに、11月29日、翌週6日とマニラ盲人教会に行った時、そこで出会う視覚障害者たちにも、タクロバンの視覚障害者の状況と、そして音声の出る聖書を探してるということを言い続けたんです。
 29日に、私のお父さん(3年前留学時のホストファザー)に会った時に、音声の出る聖書について聞いたら、お父さん自身は知らなかったのですが、元フィリピン盲人連合会長出歩かれは顔が広いです。
「ロリー、ちょっと来て。由香理が音声の出る聖書をタクロバンに送りたくて探してるんだって。相談にのってあげて」と、その場にいたRBIのスタッフを呼びよせます。
RBIはこのブログにも何度も登場しているように、フィリピンの視覚障害児教育においてもっとも力(とお金)を持っているアメリカのクリスチャンNGOです。本部はアメリカにあって、フィリピンのほうも代表者はアメリカ人ですが、その他の職員はフィリピン人です。
 ここでお父さんに紹介されたそのスタッフと話して、RBIが2種類の音声聖書を持ってることを知りました。一つはカセットテープ録音、もう一つは「デジタルバイブル」と彼女が呼んでいたもので、こっちならラジカセがなくても使えますし、使い方もシンプルだと言います。
さらに、視覚障害者なら無料でその聖書を提供すると言うのです。さすが、お金が有る団体は違いますね、よく電子機器を無料で配れますね。普段お金の力でずいぶん傲慢な活動をする団体ですが…、たまにはいい仕事します(笑)

 私にはRBIのスタッフで数人友達がいます。早速、受付担当の人に連絡をとって、そのデジタルバイブルの詳細を聞きました。配布は無料ですが、基本的にはRBIマニラに取りに来てもらう、あるいは地方に住んでる人には着払いで送って、さすがに送料までは負担してくれないそうです。
というわけで、私が5人分をマニラのオフィスへ受け取りに行って、自費で送ることになるわけですが、もう一つの問題が、確かに無料なのですが、無料でもらうためには受け取り手が視覚障害者だと証明するための障害者手帳の提示が必要だと言われて。
障害者手帳はコピーやスキャンでいいんですけれど、被災地の人達の家にインターネットやコピー機やスキャナーやデジカメがあるわけもなく、本屋さんでコピーを取ってもらってそれを郵便で発送するお金が出せるわけも無く…。
とにかく私の分を装って一つだけもらって、1番必要としているCさんにだけ送るか、あるいは障害者手帳さえ見せれば受け取りは代理でもいいらしいので、マニラの視覚障害者5人から手帳を借りて代理で受け取りに行くか…など考えながら、とりあえず今日RBIに行きました。
 けっきょく、受付担当の人が私と3年前からの友だちなこともあって、「あなたがタクロバンに行ったのは知ってるし、そこで実際に視覚障害者に会ってきた、そして彼らにわたすんだと言うなら、私はあなたを信じるから。本当は障害者手帳の提示がないとだめなんだけれど、被災地の人から送ってもらうのは不可能だろうし…。
今回は5人の名前と、全盲かどうかと大まかな生活状況さえ教えてもらえれば、それで受け取り手確認の証拠とするね」と言ってくれました。お仕事の枠を超えて、少しずつ積み上げた信頼関係に感謝です。

 ここで問題発生。なぜかこのデジタルバイブル、タガログ語バージョンがないんです!英語バージョン、あるいはセブ島のほうの言葉であるセブワノバージョンの2種類しかないそうです。
フィリピンの公用語はタガログ語ですし、1番需要が多いのもタガログなはずなのに、なぜタガログ語のデジタルバイブルを作っていなかったのか、これはいまだに謎です。フィリピンは、島や地方によってぜんぜん言葉が違います。
セブとタクロバンなんてかなり近くて船でも行けそうな距離ですが、セブの言葉はセブワノ、タクロバンはワライです。私との日常会話でも英語だと難しい彼らが、英語の聖書で理解できるわけがなくて…。
なんでタガログ語を用意してないんだ、ここまで来てまさかの…。どうやら、カセットテープのほうならタガログ語があるらしいのですが、被災地の人達がテープレコーダーを持っているわけがないですし、こちらで購入したところで、電池がなくなった時彼らには買えません。
☆ 次の記事に続きます。
posted by Yukari at 22:06| Comment(0) | 日記

2015年12月05日

なんでこんなに格差があるんでしょ?

12月5日:
 朝から、フィリピン大学に通う友達が、グループワークのインタビューにやってきました。何やら、文化交流の授業の期末課題で、フィリピンで働く外国人が、フィリピンでどんな経験をしているかをインタビューすることになってるようです。
ここの家、いわゆるとってもお金持ちで、3人姉妹が全員大学まで行ってるのは当たり前、年に数回海外旅行を楽しみ、子どもたちは外出の際車で送り迎えなので、大学に入るまで公共交通手段を利用したことがなかった…というようなお嬢様です。
彼女の家に遊びに行った友達の話しに寄れば、家にテレビが4代あったとか、お母さんは働く必要がないので、趣味で修士課程に在籍してました。フィリピン人が貧しいというのは確かにそういう人が7割以上ですが、こういう意味不明なお金持ちもいます。
 そして今日も、相変わらずお父さんに車で送り迎えしてもらって私の家に現れた彼女。ちなみにこの家族は、フィリピン人ですが家での会話はタガログ語ではなくて英語です。英語はいわゆる私立学校や政府官僚が使うお金持ちの言語…、まあそれが日常会話で使われてる家です。
いいえ、けっして悪い人たちではない、むしろとっても謙虚なそして自分たちがお金持ちであることをあまり世間に見せない人たちなんですよ。でも、ところどころ彼らがそれが特別だとは知らずに無意識にやってる行動が、普通じゃ無いんです。
 たとえば今日も、インタビューのお礼としていかにもあたりまえにうちの家に置いて行った、袋いっぱいのフルーツ。スイカとマンゴーとブドウとランソーネス(ライチのような果物)と…、値段にして約1200円分、日本の物価で言えば6000円分くらいに匹敵するでしょうか。
普通、大学生の期末課題のインタビューに行って、訪問先の家にお礼で6000円分の差し入れをわたしたりしないでしょ?私たち中流階級の感覚から言ってもこの差し入れは普通じゃ無いんですけれど、たぶん彼女の家庭はそこに気づいていません。
 うちのホストファミリーもびっくりです、お客さんを招く時でさえ、果物だけにこんなにお金を使うことはないです。スイカやマンゴーは、日本よりは安いとは言っても、やっぱり果物の中では高価なほうなので、日常的には買いません。

 思い出してください。タクロバンで訪問した視覚障害者夫婦の家を。彼らは切り詰めて切り詰めて、600円で家族4人が1週間生きてましたよね。今回の私の友だち、期末課題のインタビューのお礼として、1200円分の果物を持ってきたわけです。
ある家庭では2週間分の家族の食費が、別の家庭ではちょっとしたお礼の品になる…、この格差。学校に行けない人がいる一方で、専業主婦が暇だから趣味で修士号を取る奥様がいるのです。

 今日の午後、大学院まで出て働いている弱視の友だちからテキストメッセージが来て、来週の土曜日のクリスマスパーティーに誘われました。ここに集まるのは、たいていみんな大学まで出ていて就職している、いわゆるフィリピンのトップ0.1パーセントくらいに入るスペシャルな視覚障害者たちです。
日本以上に、お金を持ってるかどうかが、障害者が学校に行けるか、就職できるかに直結している国です。こうして誘ってくれた友達も、私立のフィリピンで2番目に学費が高い大学と院を出て、弟は弁護士…とかですからね。
クリスマス会でプレゼント交換をするから、男女や年齢関係なく誰に当たってもいい300円程度のプレゼントを持って来てと言われました。でもこれも、ホストファミリーに相談したところ、参加者が大学出で就職しているようなメンバーの場合、300円なんて上辺上の数字に過ぎないようです。
本当は1000円前後、最大で1500円ほどで、本当に300円のプレゼントを持って行ったら、別に何も言われないけど恥ずかしい思いをするよと言われました。一部の視覚障害者が600円で1週間生きる中、また別の視覚障害者たちは1000円以上のプレゼント交換を含んだクリスマスパーティーを開くんですよ。
 この格差は何なんでしょうね?格差がありすぎて頭がくらくらするんです。日本でももちろん、年収何千万という人から、私のようにバイト程度の給料で生きてる人までいます。でも、さすがにフィリピンほどじゃないと思うんです。
クリスマスのプレゼント交換、もし30人が各自1000円程度のプレゼントを持ち寄るとしたら…、3万円。そのお金あれば、1週間600円で暮らしてるあの家族は、50日生き延びられるんですよ。クリスマスパーティーのごちそうと参加者の交通費と…、たぶん私たちは来週末、タクロバンの家族の1年分の生活費を1日で使います。
きれいごとを言うつもりはなくて、ある程度仕方がない、これがフィリピンなんですけれど…。来週のそのクリスマスパーティー一つなくしてその経費を他にあてれば、フィリピン大学に通う友達も、奥さんが趣味で修士号取るお金があったらそれをちょっと他に費やしてくれれば…と、複雑な気分になります。

 私は明日の朝、またマニラ盲人教会に行きます。今日インタビューに来た友達が持って来てくれたフルーツの中で、マンゴーやブドウなど持ち歩くとつぶれてしまいそうなフルーツはうちの家で食べるしかないですが、スイカとランソーネスは、明日持って行って、女子寮と男子寮に置いてきます。
ここの人達も、1日200円以下で暮らしてます。安くてお腹がいっぱいになる食べ物と言えばお米とお肉。お腹いっぱいにならない公立の悪いフルーツなんて、数年食べてないと思います。
富の分配やチャンスの分配は…、どうか平等に行われてほしい。そう思いながら、私自身そこまで毎週差し入れを買う余裕はないので、ただただ配達を担当するのでした。
posted by Yukari at 22:21| Comment(0) | 日記