2015年11月28日

お仕事を超えての本業(後半)

11月23日〜27日:
※ 前の記事の続きです。

「えっとね、私、そのフィリピン・プリンティング・ハウスに知り合いいるから、連絡先教えるよ。彼に連絡して、教科書がないっていう件伝えてみて?絶対助けてくれる優しい人だから。彼も全盲なの」
女の子が急いで席に戻って点字の筆記用具を持ってきます。メモ取る準備万端です。私、この子のやる気に感動したんです。
 誤解を生むかもしれないことをあえて言うならば、視覚障害者ってとくに子供のころ、他力本願な人多いです。助けてもらい慣れてる、誰かがやってくれると思ってるというか。
日本でさえ、こうして自分の学習や進路についての情報を提供すると言われた時に、高校生の時点で、「ノートとらなくていいの?」などと言われる前から、自分でメモをとる子、何割いるでしょう?たぶん学年18人いたら、その内3人くらいですよ。
 それなのに今この子、私や先生から何も言われなくても自発的にメモとる準備をしているわけです。しかも、メモするってことは、自分からその団体に連絡して、点字の教科書くださいって言おうとしてるんですよ。高校生の時点で自発的にここまでできる子少ないです。
そこまで自分から行動してでも勉強したい、授業に付いて行きたい、退学したくないっていう意思に、尊敬さえ感じました。周りに他の学生たちがいるので彼女だけ贔屓するようなことを言えないので直接言葉にはしていませんが、あなたが大学卒業まで行けるように私が面倒見るって、心の中で約束しました。

 ちなみに私が連絡先を教えたこの知り合いは、以前私の携帯が壊れた時に、休みの日に中古品を探しに行って、画面読み上げソフトをインストールして、当時ガイドがいなくて外出できなかった私のために、わざわざ片道2時間離れてるうちの家まで持って来てくれたあの人です。
今回も、教科書持って無いタクロバンの全盲高校生から連絡行くからよろしくお願しますってテキストしたら、「分かった、任せて」と返信くれました。彼女の教科書のことは、後はこの優しいお兄さんが助けてくれるはず。

 タクロバンの視覚障害者たちは互いに知り合いな場合が多いです。でも台風で1度携帯電話を失って、その後家が壊れたり避難したりしてて、2年間連絡先や近況が分からなくなってる友達同士がいるんです。
今回私がいろんな家に家庭訪問したことで、2年間連絡が取れてなかった全盲女性二人を、再び繋いだっていう嬉しいエピソードもあるんです。
家庭訪問する前には電話してアポを取るわけなのですが、その時話していた奥さんに、「明日は午前中にCさんのお宅を訪問してから、午後からお伺いしますね」と言ったら、
「え、あなたCのところに行くの?Cとは友だちなのよ、でも2年間連絡取れてないのよ、携帯が変わっちゃったから。彼女元気にしてるかしら、どうしてるんだろう」と言います。
この人の前にそのCさんにもアポ取りの電話をしてたので、「何だか、明日の午後から月曜日まで出かけるって言ってました」と答えると、
「出かける?どうやって?彼女にはガイドがいないはずなの。それで外出できなくて困ってるはずなのよ。誰と出かけるんだろう、どこ行くのかしら」とものすごく心配してます。

 さて翌日、Cさんの家に行ってインタビューが終わった後。「ところで、Wさんをご存知ですか?以前からの友達で、2年間連絡先分からなくなっていらっしゃるんですよね?私この後、午後からWさんのお宅を訪問するのですが、もしよろしければあなたの連絡先を彼女に伝えてもいいですか?」
さらに、「あなたが出かけるって聞いて、誰がガイドするんだろう、ガイドがいないはずなのにってWさんが心配してました」と伝え、息子がそろそろ4歳になるから、最近ガイドできるようになってきたというCさんの答えを、Wさんのところに持って行きます。

 他にも、月曜日に訪問した弱視男性は、視覚障害者の生計工場のために、マッサージなど職業訓練をする施設を立ち上げるのが夢で、今団体を作って活動を始めてるんです。
そして、私が木曜日に訪問した家の全盲の奥さんは、健常者のご主人がたまに物を売ったり、草刈で僅かなお金をもらったりする以外に収入がない、私も働きたい、職業訓練が受けられる機会を探してると話してくれました。
早速月曜日に会った人に連絡します。職業訓練の機会がほしいって言ってる視覚障害者見付けましたよ、連絡してあげていただけませんか…と。

 台風で離ればなれになった人と人繋ぐ。タクロバンとマニラの視覚障害者や情報繋ぐ、そしてそれを日本に繋ぐ。外国人でどこにも属さない私だからこそできること。
フィリピンの人達の中で、人と人や情報さえ繋がれば解決できることいっぱいあるんです。そういうところを繋いでいく、お仕事を超えての私の本業です。
posted by Yukari at 23:56| Comment(4) | 日記

お仕事を超えての本業(前半)

11月23日〜27日:

 災害時の体験を聞くのが業務だとしたら、まあ任務はちゃんと達成しているんですけれど、現地の視覚障害者たちのニーズに答える、フィリピンの視覚障害者の状況少しでも良くする…、思い込みかも知れませんが、もうこれは私の使命です。
プライベートな時間で、業務では踏み込めない部分にまで関わりますし、今稼いでる給料の大部分が、色々視覚障害者たちの生活向上に費やされてることは、これでいいんだって思ってます。
 音声が出る聖書がほしい…、こういうものがフィリピンに存在するかをいろんな視覚障害者団体に問い合わせて調べることと、存在しない場合はフィリピン大学の教会仲間に音読を頼むなどして作ること…これがまず一つ、タクロバンから持ち帰ってきた宿題です。
さらに幾つか宿題を持ち帰りました。タクロバンの一般学校に通う全盲の高校生、学校で数学の授業に付いて行けなくなっていて、視覚障害者がちゃんと理解できるように個人指導で数学を教えてくれるチューター、あるいは視覚障害者向けの数学のフォロアップ・セミナーの機会を探してます。
こういうのも、日本ならばあるでしょうし、マニラにならちゃんと視覚障害者に数学を指導できる教員がいます。でも地方に行くといないんですよ、情報格差、資源や人材の格差。勉強したくても付いて行けなくて退学に追い込まれていく状況…、私はこれが許せない。本人のせいじゃない。

 他にも、私も使っている点字の電子手帳、ブレイルメモが現在フィリピンに入ってきてるんです。日本ではKGS株式会社という会社が販売してるのですが、KGSの子会社がセブ島にあって。これ、たとえば1行に24文字表示されるブレイルメモ24なら、値段も24万円くらいします。
フィリピン人の給料で言えば、中流階級の人が4カ月働いた給料くらいなので、日本でいう100万円ちょっとだと想像してください。こんなのそのままの値段だとフィリピン人が買えるわけないんですよ、一部のお金持ちを除いて。
でも現在、JICAとフィリピン政府とKGSセブなどが協力して、何やらそのブレイルメモをもっと安価な値段で提供するプロジェクトが進行中なはずなんです。噂によれば、8分の1の値段である3万円で購入できるようにするとか。
これの詳細を突き止めるのも私が持ち帰ってきた宿題です。タクロバンの高校の視覚障害児学級の先生方が、もしブレイルメモを本当に3万円で買えるのならば、生徒たちのために何とかしてお金集めるって。
っていうか、一人だけのためなどではなく、今後高校生たちの学習機器として長年使われるのならば、3万円が本当だったら私が断食して貯めます。どこに問い合わせたら詳細が得られるのかが分からなくて、今調べてます。

 こうして私の力ではその場で解決できなくて持って帰ってきてしまった宿題も沢山ありますが、微力ながらもその場で少し解決できた問題もあります。
 高校生の女の子へのインタビューが終わった後、「ところであなたはどうやって数学を勉強したんですか?」って聞かれたんです。通訳がなくても英語でインタビューができたのは21人中彼女だけです、それくらいずば抜けて優秀な子です。
「私は盲学校だったから、教科書やプリントは点字でもらってたし、計算式や提出物も点字で書いてた」と、いったい何を聞かれてるのかよく分からないまま答えました。
「いいなぁ、私の学校、点字の教科書がないんですよ」「え?じゃあどうしてるの?音読してもらってるってこと?」「はい、いつも友達や先生など周囲の人に読みあげてもらうしかないんです。だから数学がもう分からなくて…」
そりゃそうでしょう、連立方程式なんて音読されても…ですよね。図形を描写されてもそれじゃ答えになっちゃいますし。

「え、ってか待って?点字の教科書はフィリピンで手に入るよ。フィリピン・プリンティング・ハウスって聞いたことある?」「聞いたこと無いです、何ですか?」
「教育省の下にある政府機関で、小学校から高校向けの教科書の点訳を引き受けてる団体。そこが毎年教科書を点訳して、視覚障害者がいる学校に配ってるよ。たぶん送料以外は無料なはず。タクロバンまで情報が来てないんだね」
女の子の目が輝きます。フィリピンで点字の教科書は手に入らないと高校生になる今まで思ってたようです。私が4年前にドゥマゲッティの視覚障害児学級に行った時も点字教科書がなかった…、あそこも地方だから情報が来てなくて先生が知らなかったのでしょう。
当時は私も情報を知らなくて何も提供できなかったですが、今ではマニラの視覚障害者関連団体にはかなり詳しいですし知り合いもいます。気づいたら地方に住むフィリピン人より、私のほうがフィリピンの視覚障害児教育の情報を持つようになったのかも知れないです。
※次の記事に続きます。
posted by Yukari at 23:47| Comment(0) | 日記

音声でタガログ語の聖書を届けたい

11月23日〜27日:

 レイテで色々な家庭を訪問していた時には、業務を超えて様々なエピソードがあります。ICANでは、現地の人との平等な関係を壊さないために、事業地で物をあげたりもらったりはしてはいけないことになってます。
とは言ってもそれはすでにプロジェクトが始まっている事業地での話し、障害児教育はまだプロジェクトが始まっていないので、私に事業地はありません。
同時にフィリピンでは、他人の家を訪問する時は差し入れを持って行くのが礼儀です。これは日本でもある程度そうだと思うのですが、他人の家にお邪魔してインタビューをしたり、他人の家に食事に呼ばれたりした時には、こちらからも何か(主に食べ物)を持って行きます。
 9月ごろ、上の人達と色々意見が割れたりしたのですが。私がインタビューに行ってる場所は事業地ではない、したがって言ってしまえば私たちのインタビューに協力してあげても相手にはほぼ何も利益がないわけです。
それなのにインタビューのために時間を取られて(場合によってはそのために外出や仕事を控えて)、情報を取られて、写真を撮られて…、なのに私たち何も返さずにありがとうございましただけ言って帰ってくるのおかしい。非常識な恩知らずなやつだと思われるから、次から行きにくくなりますし、噂が広がったら私、フィリピンの視覚障害者の世界で生きにくくなります。
これは上の人達もちょっと意見が割れた結果、私が自己負担で差し入れを持って行くならいいということになりました。
 普段なら少しずつの自己負担もあまり気になりませんが、今回のレイテのように10建以上訪問するとなってくると、なかなかお財布苦しいです。それにくわえて、携帯電話料金が飛ぶように減って行きます。

フィリピンの携帯電話はいわゆるプリペード式で、なくなったらカードを買ってお金をチャージする方式です。被災地の人達もたいてい携帯電話は持っているのですが、食べ物に困るくらいの収入ですから、携帯電話にお金入ってないんですよ。
最初、テキストと言って、番号で送れるメッセージを送っていたのですが、ほとんどの人から返事ないなぁと思ってたら、理由はそれだったんです。こっちから電話をかけるしか連絡手段がなくて、彼らから発信はできないんです。
だから毎日いろんな人に電話して、どんどんなくなる私の電話代。普段の1カ月分の料金、この1週間で使いました。
 事前にレイテ出身の全盲男性に、どんな差し入れを持って行くべきか相談して、お米やパンなどの実用的な食べ物を持って行けと言われてて。お米だと炊く手段を持って無い家があるかもしれないので、食パンみたいなものを毎回持って行ってました。

 台風の時の体験だけじゃなくて、30分以上話してて少しずつ心を開いてくれると、色々こんなものがほしいとか、こういう制度はないかとか相談を受ける場合があります。
40代の全盲女性から言われたのは、音声の出る聖書を探してる…と。彼女は学校に行って無いので点字が読めません。食べ物に困るような家ですから、もちろん画面読み上げソフトやパソコンなどありません。それどころか台風で白杖を失ってから、2年間白杖さえ持ってません。
白杖がない、ガイドもいないということで2年間ほぼ家から出たことがなくて、読書やネットができるわけでもなく、時間をつぶすって家でただラジオ聞くくらいです。台風の前後で生活はそれほど変わらないと言います、最初から失う物さえなかったのは、いいのか悪いのか…。

そんな生活を40年以上してたのに、聖書が読みたい、本当は点字を勉強したい、学校に行きたいって…まだ向上心を持ってたこと奇跡ですよ。この向上心、諦めたくない、私にできることなら何かしたい。
彼女には英語がほぼ通じません、タガログ語でもまあ大丈夫そうですが、本当はレイテの言葉はワライ語で、もはや未知の世界です。だから私が点字を教えることはできませんし、英語の聖書だと彼女は理解が難しいです。
唯一の方法はたぶん、タガログ語の聖書を誰かフィリピン人に音読してもらって、章ごとにそれを録音して、音声タガログ語聖書を作るしかない。でもここで問題なのは、昔みたいにカセットレコーダーなどをほぼ見なくなった今、もっとも安価でもっともシンプルな録音機械って何でしょう?
下手にICレコーダーだと、MP3プレイヤーやらビデオ機能やら色々付いてて、たぶんそういう複雑な機械だと、学校に行って無い彼女が使い方を習得するのは難しいです。さすがの私も、この音声聖書作りに1万円以上を払う覚悟は…ちょっとないですし。
カセットテープとレコーダーを買ったとしても、彼女の家で電池を買うお金はないでしょうから、1年以上持つだけの電池もいっしょにわたすことになって、電池がなくなったら使えなくなってしまいます。電気で充電できるもののほうがいいんですよね。電気くらいは彼女の家にも来てたはずなので。

 皆さん何かアドバイスありませんか?安価で使いやすい録音機器ってなんでしょう?音声で読み上げるタガログ語の聖書、どうやって作ればいいのでしょ?
彼女が携帯電話なら持ってるので、本当は携帯にそれをインストールできたりしたらいいんですけどね。もちろん彼女がスマホを持ってるわけも無く。
彼女の向上心を、今からでも学びたい、聖書が読みたいっていう夢を、どうか一緒に応援していただけると嬉しいです。
posted by Yukari at 22:35| Comment(2) | 日記