2015年11月03日

1000人へのスピーチの難しさ

10月30日:

 さて会議最終日の朝はいよいよ自分がスピーチをする番です。本当は私の前にシンガポール人の講演者がいて、私が2番目なはずだったんですけれど。
何と言うか、外国から来たお客さんならではのミスと言うか、時計をフィリピン時間にセットしなおすのを忘れていたらしく、開始時間になっても最初の講演者がいないというハプニング(彼はまだ部屋で寝てました)!!
そんなこんなで、何だか心の準備不完全なまま、私が朝1の講演者となります。先月の60周年式典と比べたら、ぜんぜん緊張しないです、もう先月と比べるなら何だって大丈夫ですよ。そして相変わらず原稿も何も持って無いです、とにかく素直に伝えること、それ原稿より大事。
 現行は持って無いと言いながらも、もちろんここに来る前、そして会議に参加している今も、夜に部屋に帰ってからなど、発表内容のアウトラインを書いてみたり、関連する資料を確かめたりはしています。さすがに…、学会とまでは言いませんが、国際会議となると適当なことは言えません。
私はこの会議に来るまで、もっと研究者中心の学会っぽいものを想像してたので、なめられないように(?)色々視覚障害児教育に関連する理論や、有名な学者の発表内容や国際機関の定義などを入れていました。
でも現場に来てみて、研究者と言うよりは参加者のほとんどが小学校から高校の先生方だということが分かったので、前日の夜などにフォーカスするポイントを変更し、理論など小難しいことは言わずに、フィリピンにおける視覚障害児教育の現場で何が起きているのか、当事者はどんな体験をし何を言っているのかなど、現場の様子や声を中心に話す内容へと大幅に変更しました。
本当は、ステージに立つべきなのは私じゃないです、本当はフィリピンの視覚障害者たちがここに呼んでもらえるような世の中になるのが1番いいです。でもどうしても、こういう場で発表するには英語が話せなければいけないとか、たんなる体験を語るんじゃなくて学術的発表にある程度しなければいけないとか、大学の先生と繋がっていないと招かれないとか…、色々あります。
だからとにかく、最初は私がこのようなステージに上がるのは仕方がないかも知れない、でもそこでやることは、この場に立てないフィリピンの視覚障害者たちの声を代弁すること、彼らから聞いた物を伝えること。
そしてもし、主催者や参加者が興味を持ってくれたら、今度は当事者たちを招いてくれるかも知れない、視覚障害児教育促進に興味を持ってくれた人、どうぞこちらの世界へ!私は入り口にすぎなくて、もっと魅力的な人、もっとすごい人、もっと会ってほしい人を紹介します。

 自分としては、今回の発表は反省点のほうが多くて、力の60パーセントも出せていないと感じています。言い訳かも知れませんが、理由は1000人に聞こえるために設定されたマイクとスピーカーです。
緊張したわけでも、準備不足だったわけでもありません、会場の雰囲気や反応を見る余裕や時計を確かめながら話す余裕さえありました、これがいつもと同じような規模なら、たぶんいつもどおりにいったはずなんです。
「皆さんおはようございます、お招きありがとうございます。後ろの方まで聞こえてますか?」と会場に呼びかけると、「Yes」と答えてくれます。このように、しっかり反応を返してくれるので、フィリピンでのスピーチは進めやすいです。
 しかし、話し始めるうちに気づいたんです、マイクにものすっごくエコーがかかってるというか、したがって自分が何を言っているのかが分からなくなりやすいということを。
マイクから10センチ以上離れれば、エコーが多少ましになることに気づいて、途中からマイクからは少し離れてしゃべっていて、それならやりにくいながらもまだ、それなりにスピーチを順序立ててできていました。
でも、私がそうやってマイクから離れてしゃべってたら、途中でスタッフの人にマイクを近づけられてしまって…。つまり、マイクから離れるなってことですよね。何だか後ろのほうが何となくザワザワなってきてて…、たぶん、マイクから離れてしゃべると、1000人の大きな会場なので後ろの人たちに聞こえてなかったんだと思うのです。

 仕方がないので、最初10分を過ぎたころからは、マイクから数センチのところでしゃべるわけですが。いかんせん会場は大きくて、マイクで拾った声を会場のスピーカーから出してますよね。
そうすると、マイクを通って、会場に自分の声が聞こえるまでに0.1秒ほどの時差があります。だから、自分が話したはずのことがまだ会場に出ていない、自分の声を聞きながら話すとうまくいかない、何だか自分が本当にしゃべったのかどうかが分からなくなってくるんです。
そして1000人に届かせるためにマイクはものすごくエコーがかかっているので、短くて発音のはっきりした単語を選ばないと、何を言っているのか分からなくなるんです。皆さんカラオケで、マイクにエコーがかかりすぎている時、かえって音程やリズムなどをとりにくくなった経験はありませんか?あれに似ています。

私がこれまでに講演をさせていただいた最大数は浅草公会堂の600人で、それでさえステージから会場が遠くて、聞き手の雰囲気が読めなかったのですが、まだ時差なく声を届かせることができました。
200人以下などなら、自分が本当に言いたいことを伝えればよくて、自分の力を100パーセント発揮した講演ができます。400人規模になってくると、ステージと会場が離れてて、会場の雰囲気が読めなくなるので、反応が分からなくても進められるように、分かりやすい筋道や簡潔な言い回しが求められるようになってきます。
講演がなりたつのは最大で600人までですね。それを超えると、もはや講演じゃなくてパフォーマンスをするしかないんです。1文が長い話しなどはぜんぜん伝わらなくて、短い単語で一言ずつゆっくり、抑揚つけて、そしてとにかくエコーの中で主張を届けるために、自分の意見や主張をぶつけるしかなくなってきます。
政治家の演説がつまらない、中身がないなどと言う人たちがいますが、自分が大きな会場のステージに立ってみて、その理由が分かりました。1000人の会場で、中身のある話しなんて伝わらないんです、主張を並べるしかない、説明などは何言ってるか分からなくなるんです。
 今私は、人の数に反比例してスピーチのクオリティが下がります。これは反省点ですね。200人以下、400人以下、600人以下それ以上、会場の大きさや人数に合わせて、講演で使う単語や方法などは、変えていかなければならないことを学びました。
posted by Yukari at 01:27| Comment(2) | 日記